a box of chocolates

You never know what you're gonna get.

KG+ SELECT 10 Artists

9月最後の日曜日。近所で写真の展示会をやっていると聞いたので、妻と三男と一緒にでかけてきました。

kyotographie.jp

詳細は上記サイトによると、「KG+」という2013年スタートの公募型アートフェスティバルがあり、その中で2019年から始まった新しいプログラム「KG+SELECT」は、審査委員会によって選出された10組のアーティストを元・京都市立淳風小学校の各教室で紹介するイベントだそうです。展示会場である元・淳風小学校は平成29年まで小学校として使われていた校舎で、147年以上の歴史がある建物です。
教室をひとつずつ使ってそれぞれのアーティストが展示をされていて、非常に見応えがありました。気候の良い9月の昼下がり。教室の窓から差し込む光も柔らかく、作品を優しく照らしてて、素敵な空間を演出していました。私が行ったときは人出も少なく、ゆっくりと作品を鑑賞できました。
会期は10月18日まで。お近くの方は是非足を運んでみてください。
受付の方に写真撮影について伺ったところOKとのお返事でしたので、写真と共に各展示の感想を簡単に紹介したいと思います。以下の順序は展示を見て回った順番です。

Hoarders / 黄 郁修

Hoarderとは、ものを溜め込む人。整理ができず家の中がもので溢れかえっている方の心理状態に写真からアプローチしていくというもの。私自身も整理整頓が得意な方ではないので、油断するとものがどんどん溜まっていき片付けができない状態になってしまいます。

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写真と共に、室内には片付けられない様々な様子を再現してありました。テーブルの上に溜まる空のペットボトル。流し台には食べ終わったプラスチックケースがたまり、ベッドの上には洗濯物がそのまま投げ出されていました。

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あー、これわかるなーというのが上の写真。テレビの前に部屋の主がすっぽり収まるスペースがあり、その周りを生活品のゴミが取り囲みます。これと似たような様子を以前に見たことがあるぞ。後でまとめて、と考えずに都度片付けるのが一番なんですけどね。こうなってしまうみなさんも、それは分かっているはずなんですが、行動に移せない気持ちもわかります。

Graveyard of Lights|光の墓 / 中川 剛志

今回の展示で唯一の土足禁止となっている場所でした。暗幕で囲まれた教室の中には、様々な形のオーロラのモノクロ写真とその前にろうそくの灯りが灯されています。

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本物のオーロラの幻想的な雰囲気が感じられました。モノクロでしたが、脳が勝手に色を補完してくれたような気がします。

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三男も不思議そうに見ていました。

勇魚|Isana / MOTOKI

作家の拠点である房総半島で行われていた捕鯨についての写真が展示されていました。

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巨大な鯨という生物と向き合う漁の神秘さを感じることができました。窓際に飾られた、海で鯨が跳ねる様子を映した3枚の写真が素敵でした。

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教室の作りを利用した、鯨にまつわる神社の写真展示が良かったです。

A Red Hat / 髙橋 健太郎

1941年に治安維持法違反容疑で逮捕された経験(「生活図画事件」)を持つ二人の男性を撮影した展示。近現代日本と「表現の自由」の危機について考察するものだそうです。

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当時撮影された写真のようですが、この内容の写真で「国家を批判し、その思想を周囲に啓蒙している」と逮捕されてしまうというのは、今からは考えられないですね。

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Osaka Ben|大阪弁 / Chloé Jafé

フランス人写真家の目を通して切り取られた「あいりん地区」の風景。

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会場真ん中にはホームレスの住まいを思わせる掘っ立て小屋が作られ、中には地区で暮らすいろいろな方の人物写真が飾られています。

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黒板のところに飾られていたワンカップを中心に据えたコラージュ写真がポップでした。

The Beautiful Kakashi World / ウスイ チカ

人間そっくりのカカシをいろいろな場所に連れて行って一緒に写真を撮っているフォトグラファーの展示。

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教室には、授業をうけるかかしの子どもたちがたくさん。黒板横の説明を読んで振り返ると、教室にこの光景が広がっていました。一瞬本当の人と見間違えてドキッとしました。カカシやばい。

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この展示は三男も気に入ったようです。

Touchable Future / 草本 利枝

震災で住まいが流され、仮設住宅に住まわれていたひとつの家族、ひとりの少年を追った展示。震災という辛い体験を跳ね返すような、キラキラとした子どもや家族の表情が素敵でした。撮影された草本さんが会場にいらっしゃって少しお話が聞けたのも良かったです。

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私も自分の家族の写真を撮りますが、この瞬間、この表情を切り取れるのがすごいと思う写真ばかりでため息がでました。入り口から写真を追いかけていくと、この家族の9年間をたどることができて、最後の写真では小さかったお姉ちゃんがめちゃめちゃ大人っぽくなっていて時の流れを感じました。流されたカフェが再びオープンできたというのも良いですね。

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教室の床に目を落とすと、間取りのようなものが書いてありました。これがこの家族が住んでいた仮設住宅の間取りとのことで、教室という狭い空間をうまく使われていました。

夢のつづき|The Continuation of the Dream / 小出 洋平

こちらも震災にまつわる写真の展示でした。震災からの9年間の被災地について、写真や新聞の切り抜きで表現されています。

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新聞の見出しのコラージュは迫力があります。

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写真の展示は、一枚ずつ黒箱に収められていました。原発ブラックボックス感、また私達に伝わってくる情報がある方向から切り取られたものであることを訴えられているような気がします。

Beneath the Scar / 梁莹菲

性暴力の被害を受けた女性の心理を表現された展示でした。

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首元を這うナメクジの写真がめちゃめちゃ秀逸だなと思いました。

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Gaze / 陳啟駿

2019年の台湾で、「逃亡犯条例」の改正案をめぐって、政府と住民たちとのあいだに生まれた激しい対立。デモに参加したティーンエージャーの顔を中心に据えた展示でした。

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床に並べられたいくつもの顔のパネルは、ひとつひとつ異なる表情を持っていて、その手触り(触ってもOKな展示でした)から、彼らの激しい感情や受けている弾圧などを感じることができました。

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黒板には展示を閲覧した人のメッセージが書かれており、活動を応援する言葉がたくさん書かれていました。

子ども写真コンクール展2020

3階には、特別エキシビションとして、子どもが撮った写真が展示されていました。

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元・淳風小学校

会場の小学校は、最初に書いたとおり100年以上の歴史がある建物です。写真の展示だけでなく、中をウロウロするだけでもいつもとは違う感性が刺激されました。

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本当に向こう側が覗ける鍵穴。小説とかで読んだことはありますが、実際に目にしたのは初めてかも。覗くとしっかり向こう側が見えました。

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これまで多くの人が上り下りしたであろう階段。木のしなり具合が歴史を感じさせてくれます。