a box of chocolates

You never know what you're gonna get.

なかなか帰れない出張

日帰りのつもりで東京出張へ行って、なんやかんやで3泊することになった同僚の姿を見て、思い出したSIer時代のできごと。


年末に上司から、年明けリリースで超デスマっているプロジェクトへの異動をつげられた。そのときのリリースは顧客の大阪の事務所で、僕は東京勤務。デスマ嫌だなぁと思ってお正月休み明けに会社へ行ったら、配属先のチームのほとんどがリリース場所である大阪に行っていていなかった。これはラッキー、今日はインターネッツでもして帰ろうかと思っていた昼下がり、新しい上司から電話が入って、大阪に来てほしいとのこと。「1泊ですか?」と聞くと「1泊でいいから」ということで、一旦家に帰って下着類を取ってから、新幹線に飛び乗って大阪へ。

初めて行く顧客の事務所。プロジェクトルームと呼ばれていた部屋へ案内され、ドアを開けると、すえた臭いがツーンと漂ってきた。中には何日もお風呂に入ってなさそうなプロジェクトメンバーが数名。みんな死んだ魚の眼をしていた。これはやばい、と思ったのもつかの間。怒涛のようなリリースの波に飲み込まれていった。

精算系のシステムのリプレイス案件だったので、新システムで出力した帳票と、旧システムで出力した帳票が合っているのかをチェックしないといけない。目の前には山のような紙が積み上げられていた。それを目でチェックしていく。間違っていた行には蛍光ペンで線を引いて、なんで間違っているのかをチェックしないといけない。

目でのチェックは、時間はかかるがまだギリギリできる。だが、なぜ数字が違っているのかは、経理の知識も必要だし、新システムと旧システムの仕様を知らないといけない。その日にプロジェクトに参加した僕は当然知るわけもない。だが、やらないといけない。心を無にして、チェックを繰り返す。1日が終わり、ああこれはしばらく帰れないなと悟った。

次の日も次の日も、朝から晩まで同じことの繰り返し。窓がないプロジェクトルームでの作業は心をじわじわと摩耗していった。妻からも心配の電話が入る。だが、いつ帰るとも約束できない。完徹はさすがにないが、連日深夜まで働いて、翌日は早朝からの作業。寝不足が募る。5日目の昼に下腹部に違和感を覚えて、トイレに駆け込んで便座に座った瞬間に、ゼロ便意からの大量の便が出た。寝不足だと便意すら感じないことを学んだ。SIerは学びが多い。

1週間目の昼、上司から「代わりのメンバーを派遣したので入れ替わりで東京に帰ってきていい」という連絡をうけた。そのメンバーに作業の内容を伝え、新幹線の駅へ向かう。新幹線の切符を買い、ホームへ立って、乗るべき電車を待っているときに、唐突に涙が出てきた。

SIerを辞めた今でも思い出すあのときの出来事。精神的にも肉体的にも辛い期間だったが、お客さんには優しくしてもらえたのがまだ救いだった。会社近くの美味しい店にご飯に連れて行ってもらったり。


同僚の東京出張は、色々とやるべき仕事をこなして充実の4日間だったようです。


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photo by L Lemos