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ドラマ「半沢直樹」にはまった人へおすすめしたい作品

半沢直樹」好調ですね。回を重ねるごとに視聴率が上がっていってるそうで。ドラマ関連グッズの「倍返し饅頭」もバカ売れだとか。
人気の要因も色々なところで分析されています。ドラマの品質が高いというのは大前提としてありますが、個人的には「組織の中で上司と戦うかっこよさ」「舞台俳優を中心とした少しオーバー気味な演技」がはまりポイントだと思っています。

ということで、そのふたつのポイントを抑えた作品を3つご紹介。

金融腐蝕列島 呪縛

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第一勧業銀行の総会屋事件をモデルとした作品。ずさんな融資を繰り返し、総会屋にお金を流していたACB銀行は、検察の強制捜査の対象となり、組織が大きく揺らぎます。その中で危機感と決断力がない上層部に対して、ミドルと呼ばれる中管理職の4人が立ち上がり、組織の正常化へ向けて行動を起こすというストーリーです。

総会屋事件の概要はWikipediaにまとめられていました。

1997年には、総会屋への利益供与事件で本店を家宅捜索され、近藤克彦頭取の退任、頭取経験者の多数逮捕や宮崎邦次元会長の自殺という事態を引き起こし、社会的に非難された。この時も、逮捕された元頭取の中には「あれは旧第一銀行の案件で、自分は旧日本勧業銀行出身だから関係ない」などと公判で無責任な証言をした者がおり、いかに旧第一・勧業の関係が悪いものであったかを露呈してしまう結果になった。この不祥事以降、宝くじの広告から「受託 第一勧業銀行」の文字が消え、みずほ銀行となった現在も広告には表示されていない。

第一勧業銀行 - Wikipedia

主演は役所広司仲代達矢無名塾の先輩後輩です。このふたりが、ACB銀行の相談役と行員、義父と義息という関係で演技合戦を繰り広げています。共演陣も豪華で、椎名桔平矢島健一、中村育二、遠藤憲一風吹ジュン、若村麻由美、もたいまさこ根津甚八石橋蓮司佐藤慶黒木瞳丹波哲郎と、大変濃い役者が集まっています。舞台出身の役者の方が多いので、「半沢直樹」に負けないくらい濃い演技を楽しむことができます。

この映画には、僕が特に好きなシーンが2つあります(以下、ネタバレ)。

1つは、相談役の佐々木(仲代達矢)が、久山(佐藤慶)と対峙して駄々をこねるシーン。

佐々木「要するにブルームバーグ・ニュースを使って僕に辞表を書かせる気かっ?」
久山「申し訳ありません」
佐々木「どいつが旗振ってるんだ!? 国際部か? 海外支店の女か?」
久山「さあ」
佐々木「坂本や今井にしてもそうだ。僕のことをちっとも気づかってくれん。情けなくて涙が出るよ。まあいい。周りからも色々言われているから相談役は辞めてやる。だが、この部屋から出て行くつもりはない。最高顧問という肩書で残らしてもらう」
久山「そういった名称はございませんが」
佐々木「機関決定すればいいだろ!」

責任をとって辞めろって話なのに、肩書を変えるだけで組織に残ろうとする。しかも、そのために新しい役職を用意しろという横暴。あまりの暴君っぷりに思わず笑いがこみ上げてしまいます。

もう1つは、MOF担(大蔵省担当)の片山(椎名桔平)が、大蔵省の役人に啖呵を切るシーン。

役人「これからのグローバルコンペティションで生き残るためには、ROEだったら不良資産を最大デフォルトでやっても、欧米なみの12%を超えなきゃお話にならないよ」
片山の迎えの車に乗るふたり。
片山「おかげさまでACBも再生に向けての第一歩を踏み出すことができました。本日は赤坂でも向島でもとことんおつきあいさせていただきます」
役人「そおお? ここんとこ、てずりーの大蔵温泉コースが続いたからねえ」
片山「はい」
役人「久々に歌舞伎町で松阪牛でも拝みますか」
片山「ええ、もう喜んで…と思ったけど…。なぁ梶原、大蔵がさあ先陣切って古い慣習切っちゃえよ」
役人「あぁ?」
片山「(役人の肩をぐっと引き寄せ)俺たちが大人になんないと、日本の金融機関いじめの口実を探している外人さんたちと喧嘩もできないぞ」
役人「…うん」
片山「お前さぁ、そういうのちゃんと考えてるか?」
役人「はいっ」
車を降りる片山
片山「(降り際に車の中の役人に向かって)ああ、今度は検察のターゲットが大蔵だってよ。あんたのノーパンしゃぶしゃぶ狂い、つかまれてますよぉ」
車のドアを締め、ネクタイを外し、スーツの上着を道に投げ捨てて去る片山。

一時期話題になった、銀行の大蔵省への過剰接待。そしてそれに使われていたノーパンしゃぶしゃぶ。時代を感じさせる一コマですが、今まで大蔵に対してヘコヘコしていた椎名桔平が、ずばっと言いたいことを言うという痛快さがあります。


クライマーズ・ハイ

クライマーズ・ハイ [Blu-ray]

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クライマーズ・ハイ (文春文庫)

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

日航ジャンボ機墜落事故を取材する地元新聞社を舞台にした物語。原作は横山秀夫さん、映画化にあたっての監督は「金融腐蝕列島 呪縛」と同じ原田眞人監督です。

銀行は登場しませんが、様々な利害が衝突する新聞社の中で、いち記者としての信念を貫こうとする悠木(堤真一)の葛藤と活躍にぐいぐい引きこまれます。
航空機墜落というビッグニュースを取材できる若者に対して、それまでのビッグニュースである「大久保・連赤」を取材してきた世代が、陰湿な嫌がらせを仕掛けてきます。
半沢直樹」を演じている堺雅人さんも重要な役どころで出演しています。また、佐山(堺雅人)とコンビを組んで事故現場の取材をし、精神に異常をきたしていく神沢役として滝藤賢一さんが出演されています。滝藤賢一さんは、「踊る」シリーズで中国人刑事役として有名です。この方、「踊る」ではコミカルな役どころですが、追い詰められていく人の演技がすごく上手い。半沢直樹の第2部では滝藤賢一さんも登場するようなので、どんな追い詰められ方をするのか(追い詰められないかもしれないけど)楽しみです。

クライマーズ・ハイの中で印象的なのが、営業部のドンと悠木が対峙するシーン。記事のクオリティを高めるために、なかなか新聞を刷らない社会部に対して、営業部のドンが「記事をこねくり回すのはマスタベーションにすぎない」「なんなら白紙で持ってきてみろよ、全部売りさばいてやるから」と挑発します。薄暗い部屋の片隅でくちゃくちゃガムを噛んでいるっていう姿も、会社員というより完全にあっちの世界の住人っぽい。明らかにやり過ぎだろうと思いつつも、もしかすると実際の現場もこんなもんかもしれないと思わせるシーンでした。


空飛ぶタイヤ

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)

半沢直樹」の原作を書かれている池井戸潤さんの小説です。WOWOWでドラマ化もされました。「鉄の骨」「下町ロケット」など、池井戸さんの作品には、「半沢直樹」にある痛快さが必ずあって、そこが読んでいて気持が良いところです。その中でも「空飛ぶタイヤ」は僕が特に好きな作品。

物語のベースになっているのは、三菱自動車製大型トラックの脱輪による死傷事故と、三菱自動車リコール隠し。大企業に立ち向かう小さな運送会社という構図になっています。

この物語にも銀行が登場して、会社経営の大変さの一端を見ることができます。この物語に会社経営、そしてそこに登場する銀行という視点は、池井戸さんならではのものだと思います。



ドラマ「半沢直樹」は、今夜から第2部の東京編に突入します。120億の負債を抱えたホテルの再建というミッションに半沢がどう取り組んでいくのか楽しみですね。
これだけ人気があったら、半沢シリーズ第3弾として出版されている「ロスジェネの逆襲」の映画化も十分ありえますね(スペシャルドラマでもいいですけど)。

ロスジェネの逆襲

ロスジェネの逆襲