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チームのタイプとリーダーシップ

id:juseiから借りた「ゴールは偶然の産物ではない~FCバルセロナ流世界最強マネジメント~」の感想メモです。

ゴールは偶然の産物ではない~FCバルセロナ流世界最強マネジメント~

2003年から2008年に、世界的サッカーチームであるFCバルセロナでCEOをつとめたフェラン・ソリアーノによるマネジメント論が綴られた本です。
前半は、サッカーチームを興行としてどのように運営していくかという話で、後半は、サッカーチームをどうやって監督がマネジメントしていくかという話でした。

前半は、経営者やマーケティングの担当者の参考になりそうかな。僕はサカつくやっていた時期だったので、チームをどういう方針で運営していくか(世界的ビッグクラブなのか、国内リーグでの強豪なのか、地域密着型のチームなのか)を決めて、集客数や放映権を売って、年俸や設備投資の原資を稼ぎだしていくみたいな流れにそうだよなーと納得。チームの方針にそぐわない補強とかしちゃうと、年俸がやりくりできなくなって破綻しちゃうとかね。ビッグクラブの施策の真似を、地方のチームがやっても同等の効果は出ないです。
こういった経営系の話は興味深かったですが、より実感をもって読めたのが後半のマネジメント論のあたり。

なるほどと思ったところをいくつか紹介します。

チームの4つの段階

チーム(本ではサッカーチームの意味で使われていますが、仕事上のチームに置き換えてもらっても当てはまると思います)には次の4つの段階があって、この段階をぐるぐる回っているという話。

  • 形成期
    • メンバーがお互いの様子を探りながら仕事をすすめていく時期。この時期を通じてメンバーはお互いを知るようになる。
  • 混乱期
    • メンバーが希望の仕事ができなかったり、意見が通らなかったりして、不満をためる時期。メンバー間の対立がおこる。対立が発生したら、リーダーが、あるいはリーダーシップを発揮するメンバーが対立の原因を完全に取り除く必要がある。原因を取り除かず、対処療法ですましてしまうと、チームが崩壊する可能性が高まる。
  • 統一期
    • チームの行動規範が確立し、メンバーがチームの希望に沿って動いている。一方で、創造性が失われる可能性も高まる。
  • 機能期
    • チームが結束して、一体となって活動する時期。チーム全体が追い風を感じて仕事ができる。

みなさんのチームは今どういった時期にあるでしょうか。「混乱期」にあるという人は、不満や対立の原因を取り除いて「統一期」になるようにしないといけないですし、その先の「機能期」になるようなマネジメントを行っていく必要があります。
これらの4つの段階は必ず順繰りに回るわけでもないというのもポイントで、形成期のあといきなり機能期に入ったりすることもあるし、機能期のチームがあることをきっかけに突然混乱期に入ることもあるでしょう。
大切なのは、自分たちのチームが、今どの時期にいるのかをきちんと把握して、適切な打ち手を打っていくということになります。

チームを特徴づける4タイプ

その「チーム」ですが、「才能」という軸と「コミットメント」という軸で以下のようなマトリックスを作ることができます。

才能 低 才能 高
コミットメント 高 能力にはかけるが意欲的で、
指導者から学ぼうという
前向きな姿勢があるチーム
能力があり意欲にあふれたチーム
コミットメント 低 能力、意欲、自信に欠けるチーム 能力はあるが意欲に欠けるチーム
目標達成する自信は持ち合わせている場合もある

コミットメントはプロジェクトへの貢献度というニュアンスです。
自分が所属しているチームはどこに位置づけられるでしょうか。右上に入りたいところですが、これも場合によりけりという感じですね。
先ほどの4つの段階と一緒で、プロジェクトが進むうえで、チームの状態が変わることがあるので注意が必要です。右上のいけてるチームだと思っていたら、いつのまにか士気が低下してコミットメントが低下していることがあったり、人員の入れ替わりでコミットメントは高いがチームの才能(パワー)が相対的に低くなってしまうということもありえます。

チームのタイプにより指導者が取るべきリーダーシップの4タイプ

先ほどの4つのチームのタイプに対して、指導者(マネージャー)が取るべきリーダーシップが以下の図になります。

才能 低 才能 高
コミットメント 高 直接的指導
チームがなすべきことを決定し、監督する
コミュニケーションは主に上から下への一方向
メンバーに任務を委任する
日常業務は現象
摩擦が起きそうになれば、
解決に向けて調整する
コミットメント 低 チームを再編成する
優秀な人材を迎え、動機付けを行う
メンバーの意見を聞き、決断をくだす
コミュニケーションは双方向

才能もコミットメントも高いチームについては、メンバーに委任して、普段は調整くらいの仕事でよくなります。
才能はあるがコミットメントが低いチームについては、メンバーのコミットメントを引き出すように意見を聞き、指導者が決断を下すスタイルにしないといけませんし、コミットメントは高いが才能が低いチームに対しては、マネージャー自らビシバシと「指導」していくスタイルにしないといけません。両方共低いと、チームの再編成から検討する必要があります。

マネージャーが難しいところは、チームの状態が変わったときに、マネジメントのスタイルを明示的に変えていく必要があるという点だと思います。チームの状態が変わるときにいるメンバーから見ると、キャラクターが変わった、人が変わったように見えるかもしれませんし、メンバーとの心的距離が変わることも考えられます。マネージャー観点だと、この「変化」を起こすのはなかなか心理的な障壁があって難しいのかなと思いますが、これをある程度コントロールできるようになると、マネージャとしてひとつ変わった景色が見えるのかもしれません。

4つのリーダーシップのタイプ

最後に、リーダーシップの4つのタイプを紹介します。
以下の図の通りで、コンテンツとはチームが行う実務に関するマネージャー自身の能力と置き換えてください。サッカーチームであれば優秀なサッカー選手であるかどうか、エンジニアであれば自身が優秀なエンジニアかどうかということですね。

管理能力 低 管理能力 高
コンテンツ 高 権威的エキスパート コーチ
コンテンツ 低 政治的独裁者 まとめ役

管理能力もあって、実務能力も高い場合は「コーチ」として、チームメンバーをサポートする形でチームの中でリーダーシップをとることになります。基本的にはこれができると最高かなと思います。
一方で、管理能力は高いが、実務能力は低い場合は「まとめ役」としてチームをサポートします。実務に関するアイデアなどについてはチームメンバーからの意見をすいあげ、うまくまとめていきます。このタイプのリーダーは、失敗も少なく、チーム状況が健全なときはうまくいきますが、状況が悪化したときにしっかりと状況を見極めて統率力を発揮しないと、実務能力が高いチームメンバーにリーダーとしての実権を奪われてしまいます。
実務能力が高くても、管理能力が低い場合は、そのリーダーはチームメンバーの失敗に対して非常に厳しくなりがちです。リーダー自身の実務によってチームメンバーが惹きつけられる(納得できる)うちは、まだ我慢してもらえるかもしれませんが、リーダーがいちど失敗すると、メンバーから愛想つかされ、その場に残ることが難しくなります。
管理能力も実務能力も低いリーダーは、一方的に自分の意見を伝え、対話を拒否し、根拠を述べず感情的に説得しようとします。間違いがあったときも自分の非を認めず、チームの誰かのせいにします。一番良くないパターンですね。

リーダーシップを発揮するには、管理能力はやはり高めないといけないということですね。
自分自身もリーダーシップを発揮するというときに、今どういう象限にいるのかを常に意識していきたいです。

まとめ

チームやリーダーシップの分類を紹介しましたが、一番大切なのは、自分自身のチームが(マネージャーならリーダーシップも)今どういう状態なのかを常に把握していくことだと思いました。
上手く行っている場合も、あぐらをかかず、チーム状況の先を予測して、先手を打っていくことができると良さそうです。もちろん簡単ではありませんが。

ゴールは偶然の産物ではない~FCバルセロナ流世界最強マネジメント~

ゴールは偶然の産物ではない~FCバルセロナ流世界最強マネジメント~